大は小をかねない

ここ数年、漁獲量が落ちておりましたマアジ

今年は若干ではありますが回復の兆しを感じております

売り先に困るほど大量に獲れるわけではありませんが、現場のイチ漁師が「欲しいな」と思ったときに困らない程度には獲れています


今週末、月に一度の東京への出稽古

私が子供のころから修めはじめてはや30年目となりましたとある武道のすんごい先生が練馬におられましてね

その先生の道場まで押しかけて稽古をつけてもらうのが月に一度の楽しみという昨今

その出稽古のときには手土産にその季節ごとの魚を干して持っていくのが通例になってまして

今月は久しぶりに小アジ干してみるか

この時分のアジは大きさによってものすごく味が違います

アジなんてどれでも同じ、などと言ってくださいますな

この時期の小アジにはこの時期の小アジにしかない味わいがあるのです




船の重機オペレーターである私は水揚げ作業時に直接魚に触る事ができません

「選別作業のときにこのバケツに小アジを四、五十匹とっておいてくれ」若いのに依頼

したのは良いのですが

例によって量が多くなるのが一次産業従事者の悪癖

ええもうこれは悪癖と言った方が良いと思いますよ




2017-06-20-001.jpg 

全部で150匹あった

体長数センチの小さいアジをチマチマ開くのってものすごく手間がかかるんだよ


まあ、数年前の「13キロ事件」よりはまだマシだけどさ

若いのに「小アジ3キロほどとっておいてくれ」と頼み

「ちょっと多めにとっておいたよー」というバケツの中を計ったら小アジが13キロ

全部で1000匹以上ありましてね

全部開いて干すまでに8時間かかった

アレにくらべりゃ150匹なんてかるいかるい

うそ

決してかるかあねえよ



体の体積が小さい分、周囲の気温で暖まってすぐに悪くなってしまうから、水揚げ時から保管、さばいている作業中から塩して干す直前までとにかく氷、氷、氷

ちょっとでも温度上げるとすぐに身がクタクタになってしまうのです



明日から雨なんだよね

港の雨が当たらない風通しの良いところに放置して帰宅

週末、コレ持って電車に乗り込む

コレ持って東京行って、師範にこれでもかってほどコテンパンに投げまくられてくる



何が何だかまったくわからないうちに天地がひっくり返る

齢70の師範によいようにあしらわれたあげくに「あなたはまだまだ基本ができてないよねえ。基本の稽古毎日ちゃんとやってる?」とかさらっと諭される


息を切らして畳に這いつくばり

「くっそーっ!!・・・おもしれえなあちくしょう!」

思わず笑ってしまいながら立ち上がったとたん、またわけのわからないうちにポンと一回転


全力を絞り出してコトにあたらないと、その指導についていくことすらかなわない圧倒的な実力差

気を抜いたらホントにヤバい


このギリギリの緊張感がたまらなく心地よい

月に一度のマゾ的な楽しみ

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昨日の晩ご飯思い出せますか?

昨夜何を食べましたか?と訊かれて答えられないと・・・という認知症の簡易チェックだそうで



先週からとにかく泳ぎまくってました

私が従事している定置網漁の網といいますのはカーテンをイメージしてもらうのがいちばん近いかと思われます

大量の浮きをしばりつけたワイヤーを水面にピンと張る、これがカーテンレール

そのカーテンレールに使い捨てのロープで数mおきに網をくくり付けて海底に向かってたれ下げる

カーテンそのもの


こうやって海中に網で壁を作り、通りかかる魚を一定の方向に誘導するわけですが、網を24時間1年中海中に設置しておりますと、フジツボなどの付着生物が網の繊維上で育ちましてね

ものすごく重たくなるんですよ

最終的には先の「カーテンレール」である水面のワイヤーの浮力が重さに負けて網全体が沈んでしまう

そうなる前にくくりつけるのに使った「使い捨てのロープ」を切断して網を回収し、洗って、破れを補修して再度設置する

これが我々の主な業務になります



太平洋岸の房総半島以南の海では網が汚れるスピードが速いので同じ網を2セット保有し、交互に使いながら1セットで漁をしている間にもう1セットの方を洗って補修して、というスタイルが主流ですね

水温が低い北の海では網が汚れるスピードが遅いのでスペア無しの1セットのみで操業している所が多いそうです


うちは2セット保有しているスタイル

この汚れた網というのは付着生物だらけでしてね

スペアの網に交換した後、陸にそのまま引き上げて置いておきますと腐敗臭がものすごくてですね

近所から苦情が殺到

そこで交換作業で取り外した汚れた網を一度海底に沈めて数ヶ月間放置するという段取りを踏む事になります

網を海底にまとめて沈めておきますと付着していたフジツボなどは死滅し、海水に洗い流されて殻だけが残る

それを引き上げればあとはその抜け殻を砕いて取り除くだけでよいわけで

省力化の面でも好都合




あくまでも

あくまでも

その「網を沈めた場所」をちゃんと覚えていればの話ですが



網の交換作業時は潜水士である私は水中にいるものでしてね

一度に全部は船に積みきれない大きな大きな網の部品を水中にあるうちにいくつかに分割し、引き上げるための段取りを付けるのが我々潜水士の役目

網を船に引き上げた後は、船の連中が近くの海底にそれを沈めに行く

船を空っぽにしてあらためて次の部品を引き上げる

そんなわけで私はその網を沈める現場には立ち会う事ができない

別の場所で作業続けてるからね



で、先週

数ヶ月沈めてあった網を引き上げようという話になって「ここに沈めたはず」と指定された場所に潜ったけども

網が無い

300m×50mというサイズのでかい網がどこにもない

無くなるはずはないんだよこんなデカいんだもの

そして10人いるウチの乗組員の誰1人として、どこにその網を沈めたのかを思い出せない

誰1人思い出せない以上は海底をしらみつぶしに泳ぎ回って探すしかない



網を沈めた可能性のある海域の広さはだいたい300m四方ってとこでして

今のこの時期、水中の視界は7mほど


ボールペンで塗り絵、みたいな感じですね

巨大な白い紙をボールペンで塗りつぶせと言われたらとにかくガシャガシャとペンを動かすしかない

そらもう泳ぎまくりですよ

300m四方のキャンパスを幅14mの細いペンで塗りつぶす作業

毎日毎日水深30mの海底をタンク背負って西へ東へ

減圧症という海に潜る事で発症する傷害がありまして、それを避けるために1回に潜る事ができる時間というのは限られてます

限界まで潜ったらしばらく時間をおかないと連続しては潜れない

捜索エリアをいくつかに区切り、数日にわけての大捜索

といっても潜るのは私1人ですが




「この職場に10人も人間がいるってのになんで誰1人どこに網を沈めたか思い出せないんだよっ!?」

3日目、網を見つけられないまま港に帰ったときに思わず叫びましたよとうとう

30mの海底をタンク背負って泳ぎまくりってのはトレーニングでプールの水面泳ぎまくるってのとは負荷が全然違うんですよね

結構しんどい




結局5日目になって、最初に指定された「ここにあるはず」の場所から数百m離れたまったく別の場所に、他に沈めてあった別の部品の下敷きになって目的の網が沈められているのを発見

部品同士が絡まり合うのを避けるために網を沈めるときは少しずつ場所をずらして沈めるのがセオリーなんですが

そこに目的の網を沈めたのを忘れてしまい、上から別の部品をかぶせるように沈めてしまっていたというオチ

そらいくら泳ぎ回っても見つからないわけさ

別の部品の下に隠れてるんだもの



親方に言いましたよ

「網をどこに沈めたのかちゃんとメモして机に貼っておけ」と




また無駄な潜りをしてしまった



結局絡み合った網を上手にわけて引き上げるためにさらに追加で無駄な潜りをしなきゃならなかったわけですが

それはまた別の機会に

「原価」「原価」と連呼するな

ネット上の書き込みを拝見していると漁師という職業についての風当たりが強いのを感じます

曰く「海に落ちてるモノ拾ってきてるだけのクセにそれで金をもらおうだなんておこがましい」とか、ね

その論調で言ったら運送屋さんなんて「頼まれたモノをここからあそこに移動させているだけ」じゃないんですか?

原価原価と連呼しまくり、労力に対価を払うという感覚を失ってしまったら、世の中のほとんどの職業がその存在を根本から否定されてしまうと思うんですがその辺みなさんはどうお考えなんでしょうか?



スクーバダイビングに使用する圧縮空気を充填したタンク

今の時代、個人でこれを所有するダイバーさんはほとんどおられず、行った先の海で空気を充填済みのタンクをレンタルして潜るのが主流となっております

このタンクのレンタル代に対しても「空気なんてもともとその辺にいくらでもあるタダのものなのに、それを詰めたタンクで金を取るのはおかしい」と主張する原価至上主義のダイバーさんがおられますね

空気はタダですが、それを200気圧まで圧縮するにはそれ相応のエネルギーが必要ですし、それに必要なコンプレッサー等の設備にもお金はかかります

200気圧に耐えるタンク本体だってタダじゃありませんし、1本十数キロになるそれを波打ち際まで運んでお貸しするだけの人員コストだってタダじゃ無いんですよ?

原価ゼロの空気で金を取るなんてけしからん

原価がー原価がーっていうなら数十年前の黎明期同様、ご自分でタンクとコンプレッサー購入して潜ったら良いと思います

維持管理の手間やコストも自分持ちで

波打ち際まで充填済みのタンク運んであげたりはしませんからご自分でエッチラオッチラ担いでいってね


数十年前の裁判で、アパートの壁に穴を開けてエアコンを持つ隣の部屋の冷気を引き込んでいた人が訴えられて敗訴しましたよね

空気はタダなんだから窃盗にはあたらない、俺は無罪だ、という主張をしていたのですが

エアコンで空気を冷やすにはそれだけエネルギーを使っている。空気を盗んだのではなく、隣人が購入した電気エネルギーを盗んだのだ、という判断で有罪

エネルギーを持つ空気というのはもはやどこにでもある無料の空気とは違うモノなのですよ





小売り店に訪れて「ネットではいくらで売ってた」とか店員に文句を言い出す人、最近増えましたよね

高齢の方に多いんですけどね

じゃあネットで買えよ、と、数日前に訪れたバイク屋で次に待っている私の存在を完全無視してたかだか数万円の自転車の値切り交渉で粘りまくっているクソジジイを見てそう思ったもんです



港にいきなり現れて「魚売ってくれ」とかいうクソジジイとかクソババアどももね

「近所のスーパーじゃいくらで売ってた」

じゃあそっちで買ってください

当港ではごねるお客様には普通にそう言ってお引き取りいただいております

「ゴネ得」てのはウチの港ではあり得ませんよ

我々がおこなっている港での魚の直売というのはそもそも漁協に出資している株主のみなさんへの優待制度みたいなものでして、不特定多数のみなさんに向けた小売りの鮮魚店では無いのです



ふらっと訪れた漁港で親切な漁師の皆さんからタダで新鮮な魚をいただいてしまいました。嬉しー!

そういう展開をウチの港で期待するのはやめてください

「ぶらり○○」とか「○○途中下車」とかの旅番組の見過ぎです

テレビ見過ぎると頭が悪くなるぞ?



関西じゃ値切るのがアタリマエの文化なのかもしれませんが

ここは関西じゃありません

1円2円の値切り交渉にいちいち応じてられるほどの労力は余ってないのですよこっちは



前置きが長くなりました

最近ウチの作業船の調子が悪い

外洋に出てるような船乗りからすると「木っ端」と呼ばれるような14トンの小さい漁船

動力はたったひとつだけのエンジン

それで船を推進させるのと同時に船上の作業機械を動かすための油圧ポンプも駆動させています

 2017-06-07-004.jpg

年がら年中油圧ポンプを駆動させているのは効率が悪いのでエンジンの前側に断続できるクラッチがついています

左側の青いのがエンジン、いすゞの480馬力、排気量1万2千cc

右側のベルトとプーリーでつながれてるのが油圧機械用のオイルポンプ系

写真中央の銀色に光ってるところにそのクラッチがついてます

クラッチをつなぐと油圧ポンプを駆動させるためのシャフトが回転する

船を走らせるときはこのクラッチを切って油圧を止める

そのクラッチがどうにも調子が悪い


で、部品交換

2017-06-07-002.jpg 

金属製の円筒の内側にゴムでできたタイヤのようなモノがありまして

空気を送り込むと膨らんで内側にあるシューがエンジン側の回転体に押しつけられる

そんな構造のエアクラッチという機械です


2017-06-07-003.jpg

そのゴムのタイヤ的なモノが経年劣化でひび割れ、空気漏れを起こしてしまいましてね

空気が漏れて膨らまず、クラッチがつながらない、と


 このゴム部分の補修は不可能なので新品に交換するわけですが

このリング状の部品がひとつ35万円

部品代だけでね

高いよなあ

2017-06-07-001.jpg

ちなみに、摩耗するためにしょっちゅう交換しなければならない、網を巻き上げるためのロープは200mひと巻きで20万円弱

網やそれを固定するためのワイヤー、碇、作業船などを含めると、定置網全部での資材代は数億円のレベルです

漁師を「海に落ちてるモノ拾ってきてるだけのボンクラ」呼ばわりしてるみなさん

落ちてるモノ拾ってくるだけでもものすごく金かかるんですよ

これこそ本当の風評被害だと思うのだが

市場における魚の値段が下落傾向にあります

魚屋いわく「魚が売れない」と

どうやら最近報道でよく目にするようになった「アニサキス」が原因の模様

「最近アニサキスが多くなってるからしばらくは刺身は食べない方が良い」と



正直言いますと、アニサキスという寄生虫はごく当たり前のものとして魚にいるものでして、ここ数年で特に増えたわけでも減ったわけでもありません

スルメイカを調理するときにアニサキスを確認して取り除かない奴がいたらそいつはただのマヌケ

ほぼすべてのスルメイカに間違いなくいますからね



なぜ今になってこんなに?という「今さら感」がぬぐえないのですが

どうやら法律が改正になって医療機関から保健所へのアニサキス症の届け出が「義務化」になったのだそうですね

今まで報告されていなかった物が報告されるようになった

で、その報告件数データだけを論拠に「数年前よりも数十倍に増えた」と言い切ってしまうのが報道の恐ろしさ

今まで報告されていなかった件について新たに報告を義務づければ「報告件数」が激増するのはアタリマエのことだと思うんですけどわざわざ記事にしてまで騒ぎ立てるほどのことなんでしょうか?

というか報道のみなさん、あなたたち全部わかっててその上でわざとやってるでしょコレ?



夕方6時頃の報道バラエティ番組ってとにかく視聴者の危機感をあおる方向で視聴率稼ぎするのが常態化してますからね

特に「異常発生もの」は視聴率が稼げるのだそうで、私の所にも某テレビ局のディレクターから「最近なにか異常発生してませんか?」などという問い合わせが定期的に



「謎の地底生物が大量発生!」

モグラでした

とかもう東スポの爪の垢でも煎じて飲ませてもらえというレベルのひどさ



その恒例の「異常発生もの」のターゲットが今回偶然アニサキスになったというように認識しております

最悪死に至るケースも!!とか、とにかく危機感をあおっていくあの報道スタイルには疑問を抱かざるをえません




今回の火種はタレントの渡辺直美さんがアニサキス症にかかったというニュースだったようです

でもさ、30年前だったかな、森繁久弥だってアニサキスにやられてたよね

私?もちろん年に1回か2回くらいはくらってますよw

何を今さら大騒ぎしているんだか



そのテレビを見ていたウチの母までもが「アニサキスが増えてて怖いからうちでもしばらく生魚はひかえよう」とか言い始めるに至って

アンタはいったい何年漁師の母親やってきたんだ?と頭を抱えるワタクシ




繰り返します

アニサキスなんてのは昔から当たり前にいるもので、今になって突然発生した突然変異種ではありません

アニサキスに当たる人が急に増えたわけではなくて、当たった人が受診しに来ましたよというデータの存在をほとんど気にしていなかったお役所があらためて気にしてカウントするようになりましたよ、というだけの話


それでもなお「10年前にくらべて20倍」になったと言い張るのならば、アニサキスに当たった人が10年前の20倍になったわけじゃなくて、お役所が10年前の20倍仕事するようになったのだと表現した方がむしろ正確なのではないかと

言い回しが乱暴すぎて仕事頑張っているお役所のみなさんには申し訳ない話だけどもね

あくまでも「たとえ」の話ですので気を悪くしないでやってくださいませ





我々の中ではアニサキス症なんてのはインフルエンザとかと似たようなもんです

「ああ、やられたな、ちょっと胃カメラ飲んでくるわ」てなもんで




というのは何年か前にも書きましたねたしか

1千万都市の東京都で1年間にアニサキス症になった人が5人も出た!激増だ!大変だ!という新聞の記事に対して、10人足らずのウチの職場の中だけでだってもっとたくさんかかってるぞwというような記事だったと記憶しております




気をつける必要はないと言っているのではありません

調理するときに気をつけて取り除くのがアタリマエのものであって、別に気にせず食っても大丈夫と言ってるわけではないのです

「なあに、かえって免疫力がつく」などというような朝日新聞ばりの開き直りをぶちかますつもりはないのです

調理時にちゃんと気をつけていれば目に見えて、指でつまんでとりのぞける大きさのごく当たり前にどこにでもいる寄生虫なんですから、新種の薬剤耐性ウィルスか何かのように過度に恐れる必要はないよと申しておるのです






やはり同じようなことを感じておられる方は少なからずおられるようで

ちょうどわかりやすい記事を見つけましたのでよかったらご覧ください

以下のリンクからどうぞ

アニサキスが増えてるから魚はやめよう?待って! 鮮魚店が「誤解です」




R.I.P

オートバイのロードレース最高峰motoGPの2006年チャンピオン、ニッキーヘイデン氏が亡くなったとのニュース

自転車で走行中の交通事故だったそうです

その事故のニュースに接したのが先週末

彼のファンであるウチのチームのNORY君が急遽応援ステッカーを作ってきましてね

2017-05-23-001.jpg

ゼッケン69

このレースはニッキーと共に走る、と




 予断を許さぬ容態との情報にただただ回復を願っておりましたが

想い届かず

ご冥福をお祈りします

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